人事・労務管理を もっと自由に、もっとスマートに。

急拡大するクラウド型人事システム市場

近年、日本では政府主導の「働き方改革」や相次ぐ労働関連法改正（残業時間上限規制や育休法改正など）の流れを受けて、 企業の人事・労務部門に求められる業務が増大しています。 これに対応するため、多くの企業が人事・労務管理システム（HRテック）の導入による業務効率化・DXを進めています。 特にクラウドサービスの普及により、これまで手作業や紙で行っていた手続きのデジタル化が加速しており、 その市場規模は急速に拡大しています。

例えば、日本の労務管理クラウドサービス市場は2021年度に2020年度比約1.3倍、 2025年度予測では2020年度比約2.4倍に達すると見込まれており、 コロナ禍でテレワークが広がったことも追い風となってクラウドサービス需要が一層高まっています。 海外でも同様にHRテックへの注目は高く、グローバルでのHRテック市場規模（HCMアプリケーション）は2019年時点で約308億ドルに達し、 今後もリモートワークやハイブリッドワークの定着によって拡大が続く見通しです。

こうした状況下で、人事・労務管理システムの中でも特にニーズが高く、 今後市場が拡大しそうな領域として以下のようなテーマが注目されています。 本稿では、日本を中心にアジア・欧米の動向も踏まえ、各領域の現状と将来性、新たなビジネスモデルの可能性について整理します。

勤務時間を正確に把握し、長時間労働を是正

勤怠管理（タイムマネジメント）システムは、従業員の勤務時間や休暇・残業を適切に記録・管理するための基盤として、 従来から広く利用されてきた領域です。働き方改革関連法では残業時間の上限規制が強化されており、 正確な勤務時間の把握と長時間労働の是正は全ての企業にとって喫緊の課題となりました。

実際、日本国内の勤怠管理システム市場規模は2021年度時点で約290億円（SaaS型201億円＋パッケージ型89億円）との調査もあり、 2026年度には約387億円に拡大すると予測されています。グローバルでも同様に市場は拡大中で、 世界の勤怠管理ソフトウェア市場規模は2022年に27億ドルに達し、 年平均7.8%の成長率で2028年までに約43億ドル規模へ成長見込みと報告されています。

近年はテレワーク増加に伴い、自宅や外出先からでも正確に始業・終業を記録できるWeb勤怠が標準化。 日本では36協定遵守や働き過ぎ防止の観点から、勤務間インターバル制度への対応や長時間労働者のリアルタイム検知など コンプライアンス支援機能のニーズが高まっています。海外でもEU労働時間指令に準拠した形で、 労働時間管理を厳格化する法整備が進みつつあり、今後も安定した成長が見込まれる分野です。

場所を問わず生産性を高めるための新ソリューション

コロナ禍を契機にテレワーク（在宅勤務・リモートワーク）は日本でも一気に普及しました。 遠隔勤務者を適切に管理・サポートする仕組みへのニーズが急増し、以下のようなツールが注目を集めています。

• リモート勤怠・業務状況の可視化ツール
• バーチャルオフィス／オンラインコミュニケーションツール
• 業務進行・成果管理（プロジェクト管理・OKR管理など）
• セキュリティ・ITインフラ支援（VPN、クラウドVDIなど）

日本国内のテレワーク関連業務アプリ市場は2021年度に前年度比130.2%増の1,327億円という推計もあり、 企業がハイブリッドワーク前提へ移行する中でさらに需要が拡大すると見られます。 米国では新規採用の60%以上がリモート勤務を前提とする予測すらあり、 今後の働き方の主流に合わせた管理システムが急速に洗練されていくでしょう。

ピープルアナリティクスで“攻めの人事”を実現

AI（人工知能）の進歩に伴い、人事領域へのAI活用（HRアナリティクス/ピープルアナリティクス）が本格化しています。 適材適所の配置や離職予測、人事評価の効率化など、従来は人間の経験や勘に頼っていた領域をデータ駆動型に変革する可能性があります。

• 社員スキルや過去評価データを分析し、最適な配置や採用計画を提案
• 勤怠データやアンケート解析で離職リスクを早期検知
• AI面接官による公正・客観的な評価サポート

今後はAIによる予測分析・意思決定支援がさらに高度化し、公平な人事制度の実現や生産性向上に貢献するでしょう。 同時に、プライバシー保護やAIバイアス制御などのガバナンスも重要テーマとなります。

人を大切にする組織が“強い”時代へ

従業員エンゲージメントとは、社員の会社に対する愛着心や仕事への熱意の度合いを指し、 組織の生産性や離職率に直結する指標です。エンゲージメント強化策やメンタルヘルスケアは、 今や「コスト」ではなく「投資」として位置づけられています。

• エンゲージメントサーベイ（定期的な意識調査）で課題を見える化
• オンライン・ピアボーナスや称賛ツールでポジティブ文化を醸成
• ストレスチェック義務化とオンライン産業医・カウンセリング

ハイブリッドワーク下で従業員のモチベーション低下や孤立感が懸念される中、 一人ひとりを大切にする仕組みがエンゲージメント向上に繋がります。 離職率の低減だけでなく、企業としての魅力（採用力）も高まり、持続的成長の土台となるでしょう。

副業・兼業、フレックスなど多彩な就業形態をスムーズに運営

働き方改革により、「副業・兼業」「短時間正社員」「フレックスタイム制の拡充」など、 従来の画一的な就業形態から多様な働き方へシフトする企業が増えています。 これに合わせてシフト作成や勤務手続きフローを柔軟に対応できるシステムが求められます。

シフト制業種ではクラウド型シフト管理システムの導入が進み、AIで最適な要員配置を提案する事例も登場。 また在宅勤務や時差出勤、子育て・介護による時短勤務などの申請フローもオンライン化が進むことで、 管理負荷の軽減と従業員満足度の向上を同時に実現します。

副業推進によって社員が複数の雇用主を持つケースが増えるなど、労務管理が一層複雑化する可能性があります。 こうした新たな課題に対応できるプラットフォームやEOR（Employer of Record）サービスなど、 今後のビジネスチャンスが広がる領域です。

EXプラットフォーム、健康経営支援、グローバルEOR…さらに広がる未来

最後に、今後特に注目される新たなビジネスモデルやソリューションをいくつかピックアップします：

• エンプロイーエクスペリエンス（EX）プラットフォーム: 勤怠・福利厚生・学習管理など、従業員が必要とする機能をワンストップ提供し、 AIチャットボットなどでパーソナライズ化を進める統合プラットフォーム。
• データドリブンな健康経営・福利厚生: ウェアラブル端末やメンタルヘルスアプリと連携し、従業員の健康データを一元管理、 予防医療やストレスケアを推進するソリューション。
• グローバル人材活用とEORサービス: 海外拠点を設けずともリモートで外国人材を雇用できる仕組み。 多国間の労務コンプライアンスを自動処理するサービスが急拡大。
• AI×人事戦略の高度化: 生成AIが組織設計や報酬設計を提案し、人事の意思決定を支援する時代へ。 データと経験を融合し、新たな組織モデルが生まれる。

日本では少子高齢化による人手不足が進む中、 人事・労務管理の効率化と“人”の最大活用が欠かせません。 さらなるテクノロジー進歩と働き方の多様化が相まって、 企業は常に革新的なHRソリューションを求め続けるでしょう。 日本発のHRテックが世界に羽ばたく可能性も高まっています。

AQUAは、こうした最新動向を捉えながら、 組織の成長と従業員の幸せを両立するための戦略パートナーとして伴走いたします。

参考文献・情報源: 各種レポート・調査結果、政府統計データ、EU法令・米国企業事例など （例：労務管理クラウド市場統計、勤怠管理システム統計、テレワークアプリ市場、AI人事レポート、エンゲージメント調査 ほか）